東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための 条例(仮称)の制定には反対である。
その理由は条例案概要を公表するまでに検討してきた資料を公にせ ずに意見募集をする東京都のアリバイ的方法に起因する。
「 東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための 条例(仮称)条例案概要」 を出すからには検討資料に該当するものがあると考え情報公開請求 をしたら1月15日、1月31日、2月27日、 4月7日などの資料があることが判明した。
なぜ、 それらの資料を提出した上でパブリックコメントを募集しないのか 。東京都の邪悪な意思が明確になるからではないか。
例えば1月15日の「 オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現するための条 例制定に向けたスケジュール」 では都議会1定のまでに条例案検討、2定までに条例骨子素案、 パブリックコメント、条例素案、3定で条例案の議会提出、 議決というタイムスケジュールが定められており、 条例に対する問題点やそもそも条例を作るべきではないという意見 を初めから排除する方向で考えられている節が見受けられる。
同じく1月15日の「 オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現するたもの条 例制定について」では条例の要素として① オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現② ヘイトスピーチ解消の推進③ LGBT差別の解消の推進という3点しか上げられていない。
オリンピズムの根本原則6は以下の通りである。
このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、 性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会的な出身、 財産、 出自やその他の身分などの理由による、 いかなる種類の差別も受けることなく、 確実に享受されなければならない。 (引用終了)
オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現すると言いな がら条例の具体的な要素としてヘイトスピーチ解消の推進とLGB T差別の解消の推進しか具体的な項目として設定していないのは、 オリンピック憲章と言えば反対できないだろうという政治的意図が うかがわれ、不誠実極まりない。 オリンピックをとことんまで政治的に利用しようとする小池都政の 薄汚い精神が表れている。
オリンピズムの根本精神に合致するような包括的な人権条例を作れ 。注
こうした、 オリンピックという錦の御旗を掲げ条例を拙速に作ろうという姿勢 は他の資料からも確認することが出来る。 そのことが典型的に表れている2月27日の「 オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現するための条 例(仮称)専門家からの意見聴取について」をあげる。
「個別に意見聴取を行い、会議体形式での意見聴取は行わない。」 その理由らしきものとして「 会議体としての意見取りまとめには相応の開催回数が必要」 だとか「意見聴取に確保できる期間は約1か月半」 などをあげている。人権に関する条例であり、 条例には前文も定める所から東京都の人権関連条例として基本法的 位置づけを持つであろう条例を作るに際し、議論の中身、 時間を制限することしか考えていない。 議論を尽くして様々な人権諸問題を解決するのではなく、 オリンピックを口実に中途半端でも人権条例を作りたいという執行 の薄汚い姿勢が透けてみえ不快である。
「政策課題としての3分野はそれぞれ専門的」東京都の人権課題は ①オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現② ヘイトスピーチ解消の推進③ LGBT差別の解消の推進の3分野だけか。 またその他の人権課題は専門的ではないと言うのか。
「アドバイザーからの意見の概要を公表することにより、 行政側のみでなく、外部の意見を取り入れたことを強調」 とは東京都がふざけた理由でいい加減な条例を作ろうとしているこ とを、 聞き取りに協力してくれたアドバイザーに転嫁する意図が感じられ 不愉快である。
なぜ、東京都はこれらの資料を公開せずに「 東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための 条例(仮称)条例案概要」のみを示し、 その該当箇所について意見をよせる形にするのか。
全ての資料を提出した上で意見を求めるべきであり、 拙速にいいかげんな条例を定めるべきではないという本質的な意見 も寄せられ、それを考慮すべき体制を取るべきだろう。
3定に条例案を提出し、 審議させ可決しようとする東京都の姿勢に人権を擁護しようという 姿勢は見られない。
条例案が作成した上で再度パブリックコメントを募集するという形 でない以上、 条例案概要の具体的記載を元に問題点を指摘する気にもならない。
以上
注ーオリンピックにも人権問題は存在する。 勝利至上主義によるドーピングの問題( IOCはアンチドーピング政策を行っているがマッチポンプである )。 五大陸で開催するという理念がありながら過重な経済的負担により 開催国がいわゆる先進国及び大都市でしか開催されないという問題 。 多数のオリンピック競技施設を建設することによってそこに済む住 民を追い出し、地域の自然環境を破壊する問題。 視聴率重視により競技に適さない時間に競技が行われる問題。 障害種別で細かくわけることにより障害者間で差別を助長拡大する 問題など。
オリンピック憲章を重要視する条例をつくることにより競技者の人 権や競技会場の建築に従事する労働者の人権がないがしろにされる 危険性があることも蛇足ながらつけ加えておく。