書評:2020オリンピックに抵抗するためのパンフレット集

■2020オリンピックに抵抗するためのパンフレット集
私たち2020「オリンピック災害」おことわり連絡会(略称・オリンピックおことわリンク)は二〇一七年一月二二日に発足。オリンピック開催が多くの分野にもたらしている状況を「災害」とらえ、さまざまな運動をネットワークでつなぐことを目的としている。オリンピックの問題点を多様な観点から明らかにし、それに抵抗していくための取り組みの一つとして連続講座を立ち上げ、その記録をパンフレット化してきた。

パンフvol.1は、連続講座のプレ企画として海外からゲストを招いた「国際おことわりコンベンション(IOC)」の記録。ピョンヤン五輪反対運動のイ・ギョンリョルさんとスポーツ・ジャーナリストの谷口源太郎さんの講演(一七年二月二五日、ピープルズ・プラン研究所)と、リオ五輪の住民排除問題に取り組むジゼレ・タナカさんの講演(三月三日、千駄ヶ谷区民会館)を収録した。連続講座第一回は小倉利丸さんの「五輪災害と共謀罪」(四月八日、文京区民センター)だったが、共謀罪成立(六月一五日)以前の講演で、小倉さんの同趣旨の講演のパンフが別に発行されていることもあり、パンフ化を見送った。

vol.2は連続講座第二回「東京五輪のメインスタジアム建設すすむ神宮外苑の再開発地区を歩く」(一七年五月二七日)。アツミマサズミさん(東京にオリンピックはいらないネット)の案内による神宮外苑フィールドワークと、その後の渋谷区穏田区民会館での講演会。五輪を口実に利権者だけを潤す「開発」が着々と進められていることを実感させた。

vol.3は講座第三回「パラリンピックは障害者差別を助長する」(一七年七月一五日、千駄ヶ谷区民会館)。増田らなさん(障害児童学校労働者)が、学校現場でのオリパラ教育強制の実態を報告し、北村小夜さん(障害児を普通学校へ全国連絡会)が、「がんばる障害者」を動員して他を排除するパラリンピックの問題点と、パラリンピックや国旗について子どもたちに「書いて考えさせる」新しい道徳教科書の恐ろしさをも明らかにした。

これから出るvol.4は講座第四回「オリンピックはスポーツをダメにする!?」(一七年一〇月九日、アカデミー音羽・多目的ホール)で、講演は山本敦久さん(成城大学教員)の「アスリートたちの反オリンピック」と、岡崎勝さん(自由すぽーつ研究所・所長)の「オリンピック精神からスポーツ・体育を問い直す」。今月二二日、オリンピック開催二年前へ向けた原宿アピール&渋谷デモで配布する予定である。

講座第5回「ナショナルイベントとしての東京五輪」(一七年一二月一六日、一橋大学)では天野恵一さん(反天皇制連絡会)と鵜飼哲さん(一橋大学教員)、第6回「3・11と『復興五輪』」(一八年三月三一日、文京区民センター)では小出裕章さん(元・京都大学原子炉実験所)と佐藤和良さん(いわき市議会議員)がすでに話されており、これらも順次パンフ化してゆく。九月の「オリンピックと映像」から連続講座の第二期もはじまる。

vol.2からフリー編集者として原稿チェックのお手伝いをしている。表紙デザインはアーティストの八鍬瑞子さん。講演のさい配布された貴重な資料も収録されており、いずれこれらパンフのエッセンスをまとめて世に出せれば、オリンピックに抵抗するための強力な武器となるだろう。「やって当然」と思われている大イベントに一矢報いて、すべてを変えはじめるきっかけにできないか。今からでもおそくない。オリンピックおことわリンク(http://www.2020okotowa.link/)
*宮田仁(2020「オリンピック災害」おことわり連絡会)/”Alert”25,2018.7