2020TOKYO五輪ー招致賄賂の本丸を暴こう!
「電通」元専務で東京五輪組織委理事・高橋治之の4回目逮捕が報じられた。2019年JOC前会長・竹田恒和退任の招致疑惑ではビクとも動かなかった東京地検特捜部がスポンサー賄賂では派手な追い込みをかけている。電通の金と人脈で荒稼ぎしてきたスポーツビジネス界のフィクサー、竹田とは慶應人脈で旧知の仲だ。疑惑では国際陸連前会長・IOC元委員ラミン・ディアクへ招致委が2億3000万円を送ったことが判明している。昨年末ブラジルで、2016リオ五輪組織委員長がディアクへの贈賄で禁錮30年超の有罪判決を受けた。招致委は高橋の会社「コモンズ」にも約9億円を振り込んでいる。今問題とされる「みなし公務員」云々は焦点外し、本質的な金の流れと利権の構造、真相究明が急務だ。
贈収賄事件の現段階は以下。①AOKIホールディングスから5100万円が支払われ、スポンサー選定に便宜。8月受託収賄容疑で高橋逮捕。AOKI側も3人逮捕・起訴。最も低いランクのオフィシャルサポーターだが、15億円のところ7億5000万円で契約。高橋の仲介で森善朗に200万円の「見舞金」を渡したとも。②KADOKAWAはスポンサー枠に出版事業が無く枠を設けることから高橋が関与。角川歴彦会長、元専務らを逮捕・起訴。高橋再逮捕。KADOKAWAは高橋の電通時代の後輩・深見和政「コモンズ2」に7600万を送金。深見も逮捕。スポンサー料は2億8000万円でAOKIよりさらに安い!出版社枠は講談社も狙っていたが、森善朗が「絶対認めない」と一喝した(週刊文春)。③広告会社「大広」(電通、博報堂に次ぐ3番手)は、スポンサー契約業務に電通の下請けとして参入するため高橋に1500万円を渡した疑い。ECCのスポンサー契約を請け負う。9月27日大広役員1人逮捕・起訴。高橋は3度目、深見は2度目の逮捕。④「パーク24」スポンサー契約で電通の再委託先として広告会社「ADKホールディングス」に高橋が口利き。パーク24(竹田が社外取締役)は10億円で契約、約4千万円がADKに、内2千万円が休眠中の高橋知人コンサル会社に。金は「竹田前会長の慰労」と電通幹部に説明(毎日)。⑤9月23日、公式マスコット「ミライトワ」「ソメイティ」販売サン・アローが、高橋に約800万円を渡した。サン・アローは’98年長野五輪の公式マスコットも販売。竹田の慰労会の名目だが慰労会は開かれず。事件は5ルートに拡大、1億9600万円の一大汚職事件になった。
東京オリ・パラがスポンサー収入で最多の約3761億円を集めたのは「1業種1社」の原則を撤廃したから。その立役者が高橋だ。もとより金まみれの五輪、リオに続き東京でも濃厚だった招致疑惑を放置し開催させた検察責任は大、徹底的に追及、断罪すべきだ。
安倍晋三の「国葬」強行当日に高橋の3度目の逮捕が大々的に報じられた。安倍死去で捜査当局が本腰を入れ動き出したとの見方もあるが疑問だ。組織委は6月末解散、7月に東京五輪1周年記念イベントが行われた。収賄罪の公訴時効は5年だが、贈賄罪の時効は3年。トップクラスのスポンサー案件等多くはすでに時効だ。高橋の「みなし公務員」のみ摘発できるタイミングが今なのだ。最初のスクープは読売で、特捜部も積極的にリーク、現政権の意向とも思えるぐらいなのだ。高橋は容疑の一切を否認し続けている。金を受け取るのは当たり前と悪びれる様子もない。それだけ賄賂は五輪につきもの?ふざけるな!
2030冬季五輪札幌招致が目論まれる中、IOCの思惑も気になる。9月、秋元札幌市長がIOCを訪問し面談する予定をバッハは直前にキャンセル、10/16五輪一年イベント来日も見送った。今、自ら登場するリスクを懸念しているようだ。五輪延期決定直前、高橋がIOCの頭越しに「コロナ禍の五輪延期」をぶち上げたことでバッハが激怒、高橋辞任を求めたとまことしやかな話も(月刊文春)。高橋を排除しトカゲの尻尾切りは好都合なのかも?
オリンピック利権は高橋一人の責任を問うだけでは終わらない。IOCや森ら巨悪の存在があるのだ。私たちは10月10日「五輪は汚職と災害の森」と銘打って、ハリボテ森の胸像や安倍、小池、橋本、山下、竹田、高橋の等身大パネルを立てJOC前「ティーチ・イン」を開催、10月16日には反五輪の会呼びかけ新国立競技場周辺をデモした。五輪記念イベントの最中、安倍追悼で黙とう(何と!)する会場に「オリンピックいらない!」の声を轟かせた。再開発で都立公園や都営住宅が壊され、野宿の仲間が追い出された場所。味をしめた人たちは、10月25日、炊き出しや越冬、野宿の仲間の住まいでもある美竹公園(渋谷)の強制封鎖をやってのけた。これが五輪後の東京の現実だ。問題を高橋のみで終わらせはしない。政治の責任と利権の構図を明らかにしよう!金まみれ・嘘まみれの東京五輪の全てを明らかにさせ札幌招致を止めよう!諸悪の根源IOCと五輪の廃絶まで闘おう。
京極紀子(「オリンピック災害」おことわり連絡会)
初出:『救援』2022年11月号