ギヨーム・ロワレ
5月17日午後7時、銀座。東京のこの上流地区は日本の10都道府県に発令中の緊急事態宣言に従って店じまいをしようとしていた。ところが100人弱のデモ隊が新橋駅前に集合し、平穏に、警察の監視のもと、32回オリンピック夏季大会に対する反対を訴えた。「オリンピックは貧乏人を殺す」「聖火を消せ!」といったスローガンが叫ばれ横断幕が掲げられた。そのうち一つは特に目を引く。「オリンピックより命が大事」。「私たちの反対運動はコロナから始まったのではありません」と吉田あや子は説明する。彼女はオリンピックに反対する反五輪の会のメンバーで、この団体は2ヶ月前から定期的に示威活動を組織してきた。そのなかには組織委員会前で毎週金曜日に行うスタンディングがある。「私たちはずっと前からオリンピックのためのジェントリフィケーションと住民の排除を告発してきました」と吉田あや子は話を進める。そのオリンピックは、今度は「人々から医療資源を奪おうとしています」。日本は4月の初めから不穏な第4波を迎えている。最近感染者数は低下しているものの、人口の70%が緊急事態宣言(日常生活に不可欠ではない商店の閉鎖、またレストランの午後8時までの時短営業)の下で生活している。とりわけワクチンを2回接種した日本人は、国が最初の大規模接種会場をオープンした5月24日現在、2%に満たない。デモ隊の小さな行進が通行人の熱狂を引き起こしたわけではないが、日本人はオリンピックというイベントに対し、はっきり反対の側に転じたようだ。
彼らはオリンピック大会が – そして94000人のアスリート、技術面での指導スタッフ、各種目の団体役員およびジャーナリストといった東京で待たれている人々が – 変異株の感染爆発と病院の逼迫を引き起こすことを恐れている。デモが行われた日に朝日新聞が発表した調査では、83%の日本人が、7月23日から8月8日まで行われる大会の中止(40%)か延期(4
3%)に賛成である。数ヶ月このかた世論調査は不満の増大を示していたがこれほど圧倒的だったことはない。他の調査は同様の多数派が、コロナの第4波に対する管政権の対応を評価していないことを示している。この不満を受けて弁護士で政治家の宇都宮健児は、5月初め、「命を守るためにオリンピックを中止しよう」と銘打ったオンライン署名を開始した。このキャンペーンは二日間で20万人の賛同を集め、今日ではさらに二倍になっている。立腹している。
「医師たちのこのような反応は前代未聞の現象です。これまでなかったこす」と鵜飼哲はいう。居住地である松本市での集会準備の最中に電話で取材に応じた哲学者でフランス文学の専門家である彼は、「日本政府はコロナ対策よりオリンピックを優先した」と考える。政府はPCR検査の受診条件を15ユーロから300ユーロも費用がかかるなど複雑にし、世論の不満を無視してきた。反五輪団体オリンピック災害おことわり連絡会のアクティブな活動家である鵜飼哲は、すでに1964年にも東京の夏季大会に対する批判の声はあったし、1998年の長野冬季五輪に反対する市民運動もあったと指摘する。2013年の招致決定時には日本人は開催を支持していたようにみえたが、その後大会開催費用をめぐる論争で熱意は冷めていった。新国立競技場の建設(12億ユーロ)や一年の延期(20億ユーロ)といったことが重なり、東京オリンピックの開催経費は準備開始から二倍以上に膨れ上がった。オリンピック委員会は126億ユーロとしているが、会計検査院の最近の監査では数字は史上最高額の200億ユーロに達すると主張されている。東京オリンピックは2011年の大災害に打ち勝った強い日本を見せるはずだった。不安気に門を閉ざした国で、超監視体制のもとで、競技は行われることになるだろう。
ル・モンド、2021年5月31日